おーい
「おーい!」
彼は力一杯に叫んだ。
しかしあたりは静まり返ったままで返事はない。
「おーい!!」
もう一度叫んでみたものの、やはり返事はない。
「おーい!」
「オーイ!」
「おーいっ!!」
「おぉーぅい!!!」
「オい!!!」
色々な叫び方をしてみたものの、あたりの静けさが破られることはない。
「」の中は発言であるという言語ルールはあるが、これが実際に音声としての耳に入るには、この文章を音読するか、この文を書いているときのキーボードのタイピング音ぐらいのものなので、誰にも聞こえないのは当然といえば当然なのだ。
そして、唯一「」内がそのまま音として存在するこの文章の中には、未だ彼以外は存在しない孤独の世界なのである。
それでも彼は、誰かの返事を期待してまた叫んだ。
「おーい!!」